石材研磨の極意:プロが教える美しい仕上げのコツ

こんにちは!石のシンシア制作担当です。
今回は、石材加工の中でも特に繊細で技術を要する「石の研磨」について、その秘訣をお伝えします。
石工の町で培った経験
私の故郷は石材加工が盛んな町で、父は石灯篭彫刻と切削加工、母は手動研磨(ポリッシャー)を手掛けていました。幼少期から母の研磨作業を手伝い、その大変さと奥深さを肌で感じてきました。見た目よりも力の必要な、大変な作業だったことを覚えています。
手動研磨機と大理石の磨き方
上の画像は、手動研磨機を使用してイタリア産の白大理石「ビアンコ・カララ」を磨いている様子です。この機械は電動で砥石が回転しますが、操作は手動で行います。大理石は御影石に比べて柔らかく、研磨しやすい特性があります。石に当たっている部分が砥石です。120mmのダイヤセラミカを使っているところです。この組み合わせで丁度いい砥石の大きさですね。
石を美しく磨くための8つのポイント
趣味で石研磨をなさっている方も、「石研磨は大変だ・・・」と感じるかと思います。ちなみに、それなりの道具を使っていて、長い経験のある石工であっても石研磨は大変な作業ですが、やはりコツはあります。
まず、石研磨とは、砥石でキズをつけることにより研磨面を平坦にする作業です。粗い砥石による粗いキズを細かい砥石による細かいキズに変えることで、徐々に研磨面に艶が生まれます。粗いキズは深いので、前段階の深いキズを残してしまうと後々厄介です。その深いキズを次の工程で消すのはとても難しいからです。
1.丁寧な作業を心掛ける
手を抜くと磨き残しが生じ、最終的な仕上がりに影響します。最初から最後まで丁寧に作業することが求められます。最後に磨き残しのキズが残っていてガッカリ・・・とならないためにも「手を抜かない」ことが大切です。結局その方が早く仕上がりますから『急がば回れ』ってことですね。
2.重要な番手を見極める
研磨工程では、すべての番手を同じ時間と力で行うのではなく、石種に応じて特に重要な番手に時間をかけることが効果的です。全工程の作業を均等に行うのは非効率です。石種によって差がありますが、
#500番を入念にかけて(#240番の倍位)
#1000番は仕上げのつもりで(さらに#500番の倍位)
つまり、削りやすい工程と、削りにくい工程があるので、それを知ることがコツになります。砥石と石種で違うのですが、大体の似たような傾向があります。
3.下地処理を徹底する
初期の粗い番手での下地処理が、その後の仕上がりを左右します。この工程を丁寧に行うことで、後の研磨がスムーズになります。やはり下地の#60番は大切ですね。
4.適切な番手の選択
工程数を減らすために番手を省略する際は、慎重な判断が必要です。誤った省略は仕上がりに悪影響を及ぼす可能性があります。8〜9工程では多すぎるので、6工程程度にするために省いてもよい工程はあると思います。ですが、省く工程の見極めが大切です。見極めにくい場合は、工程を省かない方が結局は早く仕上がります。
5.各工程後の乾燥と確認
各研磨工程後に石を乾燥させ、前の番手の傷が残っていないか確認することが重要です。これにより、磨き残しを防ぐことができます。石は乾かさないと砥石の跡が見えません。また、何番の砥石でできたキズなのか?を見極める必要がありますが、経験を積めば徐々にわかるようになります。先に述べたように、前の番手の跡を残したまま次の工程に進むと跡は残ったままになります。慣れてくると乾かさなくてもある程度分かるようになりますが、時々失敗します(笑
6.石種ごとの特性を理解する
石種によって研磨の特性が異なるため、それぞれの特性を理解し、適切な研磨方法を選択することが求められます。ある石種で培ったノウハウは、別の石種では通用しません。石種ごとにノウハウを積んでいく必要があります。それで沢山の石種を経験すれば、大まかな傾向はわかるようになります。
7.仕上げ方法の工夫
硬いバフや柔らかいフェルトなど、仕上げに使用する道具や研磨剤(例:酸化セリウム)を石種に合わせて選択し、最適な仕上がりを追求します。これも色々試さないと、一番良い仕上げ方法は分かりません。フェルトに研磨剤(酸化セリウム)がプロの定番です。やはり石種によってフェルトの種類や研磨剤の種類を変えます。石が乾いた状態で力を入れると、摩擦で石が焦げ付くので注意が必要です。
8.高品質な砥石の使用
信頼性の高い砥石を使用することで、研磨作業の効率と仕上がりが向上します。例えば、三和研磨工業の砥石はプロの間でも高い評価を得ています。みんなコレってくらいの定番です。安い外国製も使ってみましたが、突然キズの入る番手があったりしてビックリしましたし、硬い石には使えませんでした。
9.細か過ぎる番手にこだわらない
最近は、とても細かい番手の砥石がありますが、ほとんど必要ありません。その前の番手が疎かになっていては、全く意味がありません。細かい番手で仕上げる場合には、さらに下地が重要になり、難易度が物凄く上がります。上手くいくとピッカピカになりますが、曇ってしまう場合もあるので、注意が必要です。ちなみに、細かい番手になるとキズが入るような砥石と石種の組み合わせもあるので、注意が必要です。
まとめ
石の研磨は経験と技術が求められる作業ですが、上記のポイントを押さえることで、美しい仕上がりを実現できます。「石研磨とはキズを付けることで研磨面を平坦にする作業だ」ということを念頭に置き、前の番手のキズを消し切ってしまうことがとても大切です。そのためには、手を抜かないことが最大のコツになると思います。
趣味で石研磨を始めた方々の参考になれば幸いです。
メイソン
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