位牌とは
「仏教の祭祀のため、戒名や法名や法号などを記した木の板」
とされ「野位牌」や「本位牌」、「寺位牌」などの種類があります。
ただし、それらの有無や位置づけは宗派によって異なりますので、
供養方法については、
菩提寺(お世話になっているお寺)の
ご住職様に伺うのが最も良い方法です。
とは言うものの、
近年の核家族化、住宅事情の変化、
生活習慣の変化により、菩提寺のない方も多く、
供養方法についての判断に悩む方が増えました。
また、大きな墓地を購入すると後世の負担が大きくなることから、
樹木葬や永代供養塔への納骨など、埋葬方法も多様化しています。
お位牌についても、負担軽減のために
お作りにならない方が増えました。
住宅事情の変化で大きな仏壇を
自宅に設置することが難しいことに加え、
大家族だった昔とは異なり、
お位牌を管理する方にも転勤や転居などの
機会が訪れるようになったのですから、
仏事や仏具の管理についても、
従来の方法を取り続けるのは
難しいのが現状です。
そういった、昨今の事情による新しい弔い方、
供養方法について、
僧侶の方はどういった考えをお持ちなのか?
臨済宗佛通寺派福泉寺のご住職に伺ってみました。
「仏事や仏具について、
実は、宗派的な判断というよりも
各住職の判断が優先される場合があります。
たとえば、檀家からお位牌の管理依頼があった場合、
お預かりする寺と、預からない寺がありますが、
それ自体、住職の判断になる場合が多いのです。
仏事や仏具の在り方についての判断も、
住職の判断になる場合が多く、
世の中の変化に合わせて変えるのか?
従来通りの方法を守り続けるのか?
という選択についても、
各住職の考え方によるところが大きくなります。
ところで、日本の仏教は、
仏教の存亡の危機を乗り越える度に
変化してきたという歴史があります。
ですから、これからの世の中の変化に伴って、
仏事や仏具の在り方を
柔軟に変化させて良いのではないか?
と考える僧侶は大勢います。
その考え方は宗派を問いません。」
また
「誰も納得できないような突飛なことを除けば、
世相を反映させることは大切だと思ってます」
と仰っていました。
現役の僧侶の中でも、大半の方は
新しい弔い方について柔軟な対応をお考えのようです。
ですので、
菩提寺のある方は
ご住職の教えに従えば良いと思いますし、
菩提寺を持たない方が
新しい弔い方や供養方法を取り入れる場合においても、
抵抗感を持つ必要はないと思います。
そもそも、
墓石を持つことが一般的になったのも
最近と言えば最近です。
そう考えると、仏事は常に変化していると言えます。
近年の樹木葬や集団納骨堂、永代供養塔などの登場は、
世相の変化の表れであり、
自然な成り行きと捉えることもできます。
さて、画像は石のシンシアが
文字彫刻の担当をさせていただいている
永代供養塔の写真です。
石塔の側面に
戒名等が刻まれています。
この内部は納骨堂になっており、
お骨が収納されています。
永代供養塔の場合、決められた期間の後
合祀(お骨を骨壺から取り出しまとめて埋葬します)
になる場合がありますが、
骨壺を個別に安置する場合もあります。
骨壺を安置する場合、安置方法にもよりますが、
ご家族分が複数ある場合などは、
各お名前が分からなくなることがあります。
ご葬儀の際は時間に追われてしまい、
骨壺に名前を彫刻することは、なかなか難しいものです。
そこで、骨壺の取り間違えを防ぐために、
簡易的にお名前札を貼り付けて納骨するのですが、
お名前札の材質や印刷方法にもよりますが、
長い年月の間に劣化して読めない状態になります。
ですので、最近では
金属製などの文字の消えにくいネームプレートが登場しました。
そしてそれを一歩進め、
ネームプレートとしての機能だけでなく、
お位牌としての機能をもたせたモダン位牌が登場しました。
地方によっては、
納骨時に骨壺と共に白木の位牌を安置しますので、
骨壺と位牌の組み合わせというのは
それほど特殊なことではありません。
ただ、石工としての経験上、
納骨堂の中は湿度が高く、
木製のお位牌は数年で朽ちます。
せっかくお位牌と骨壺が並んで安置してあっても、
お位牌が朽ちてしまい、文字が読めず
お名前が分からないのが通常です。
とはいえ、
耐久性の高い石材で位牌を作りたくとも、
小さな文字彫刻の難易度は非常に高く、
制作が現実的ではありませんでした。
「石の位牌制作は不可能」だとあきらめていたのですが、
近年の技術開発により、彫刻機の性能が大幅に高くなりました。
その結果、石材極小文字彫刻ができるようになり、
天然石製位牌制作が可能になりました。
「転勤、転居に伴う仏壇・位牌の取り扱い」
に関するお悩みを持つ方が増えつつある現在、
お骨壺と共にお位牌を安置できれば、
管理する方はもとより、後世の負担軽減につながります。
また、手元供養の場合にもお使いいただけます。
私達の生活環境、生活習慣が変化し、
埋葬方法や供養方法が多様化すれば、
お位牌の在り方も少しづつ変化することと思います。
そして、それは自然の成り行きなのかもしれません。
石のシンシア
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