こんにちは、石のシンシアです。
石のシンシアでは石材彫刻をしております。

近年では、石材彫刻分野もデジタル化が進みました。

上画像は高さ25cm程度の大理石彫刻なのですが、
沢山の小さな意匠彫刻が施されています。
これらはデジタル技術を駆使したCNC彫刻機ならではのもので、
手作業では、ほぼほぼ不可能です。

やはり、新しい技術を取り入れ、
時代と共に歩むことが大切と考えて
CNC彫刻機を導入したのですが、
そんな折、
現代アートの古橋まどかさんから、
CNC彫刻機による石材加工についてのお電話を頂きました。

古橋まどかさんといえば、
「現代アートの祖マルセル・デュシャンを継ぐ」
と形容される気鋭のアーティストです。


斬新な個展の評価も高く、
様々なプロジェクトを手掛ける話題の芸術家、
古橋まどかさんから
今回頂いたお話というのは
「スキャンデータで石彫刻できないか?」
という内容でした。
「作品の一部分に
スキャンデータで複製した石彫刻を使いたい」
という訳です。

石のシンシアのCNC彫刻機が
作品制作に役立つなら大変光栄です。
また、CNC彫刻機の可能性を試す
絶好の機会でもあります。


スキャンデータから石彫刻というアイディアは、
まさに芸術家ならでは。
そのアイディアは斬新でありながら、
実用の可能性も秘めており、
例えば、耐久性の低い素材の美術品の
スキャンデータをとり、
石で複製を作ることで、
作品に半永久性を持たせることもできます。

ともかく、
石工にとって大変やりがいのある仕事です。


ただ、問題がない訳ではありません。
実は、CNC加工は、
石の大きさや硬さ、扱えるデータ、
精密加工できる範囲や角度など、
沢山の制限があります。

また、精密彫刻の場合、
一般的に使用される先端2mm以上のドリルビットだと、
再現率が低すぎて使い物になりません。



さて、
最初のお電話から少しの時間を置いて、
いよいよ設計図となるスキャンデータが送られてきました。


それが上画像です。

この画像は、ファイルを編集ソフトに読み込んだ状態ですが、
小さな穴やスジ、
細かな模様が、隈無く精密にスキャンされています。
まるで、NASAが月面の石をスキャンしたかのような
物凄い精度で、
その上、全くエラーのない完璧なファイルです。
これには、見習うべきプロの仕事を感じました。

これほどのスキャンデータを製作するのですから、
古橋さんの、作品への強い熱意と意気込みを感じます。
また、これだけ完璧なファイルが送られてきたのですから、
何としても、石に彫刻として再現しなければなりません。
そのためには、
先端0.2~0.3mmレベルの極細ドリルビットが必要なのですが、
石加工にそのレベルのビットを使用すると簡単に折れてしまいます。

設定の調整が肝です。



また、今回使用する素材であるトラバーチンは、
とても趣のある魅力的な石ですが、
画像のように穴や傷が沢山あるので
加工してみるまで仕上がりが予測できません。
できる限り良い部分を使用するのですが、
表面からは分からない大きな穴が加工中に現れ、
その時にはやり直しになります。

しかし、そんな苦労を差し引いても、
トラバーチンは温かみを感じる良い石です。


石加工の際の機械の送り速度は、
木材などの柔らかい素材と比較すると
非常にゆっくりです。
極細ドリルビットを使用する場合には
さらに加工速度を遅くする必要があり、
ときには、2日以上連続加工することもあります。


様々な調整の末、
今回3つ作る彫刻のメイン彫刻が完成しました。
極細ドリルビットもトラバーチン本体も、
完成までよく耐えてくれました。

スキャン画像と、加工後の石を並べてみました。

石には、トラバーチン特有の穴とキズがありますが、
6cmという小さな彫刻とは思えない、
精密な石の複製が完成しました。

高精度スキャンファイルと高性能デジタル機器、
CNC彫刻機と極細ドリルビット、
どれが欠けてもできなかった彫刻です。

まさに最先端技術の結晶、
ある意味、究極の彫刻です。



今回、石のシンシアが担当させていただいたのは、
画像にある3つの彫刻になります。



制作当初に思い描いたよりも高い精度の彫刻ができ、
ホッと胸を撫でおろしております。

あくまでも、この3つの彫刻は作品の一部分ですので、
このままでは素材の状態です。
ですから、
これからどんな作品に育っていくのかが
とても楽しみです。


現代アートと最先端テクノロジーの相性の良さは、
石工である私にも何となく想像ができます。
しかし、スキャンといえば
一般的には3Dプリンターによる積層造形を連想するところを
あえて石彫刻という切削造形を選び、
さらにはそれを実行に移すのですから、
やはり非凡としか言いようがありません。
一般人には到底不可能です。

また、石種を選ぶにあたり、
トラバーチンの魅力を見抜く、
芸術家の慧眼にも驚かされました。




今回、微力ながら
作品制作に協力できたことを
大変光栄に思っております。

また、
彫刻機の都合、石加工の都合など、
様々な手前勝手を
最後まで快く調整して頂きました。
古橋さんには、大変感謝しております。

本当にありがとうございました。




石のシンシア

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